昨日(9/17)、第7回の中小企業の会計に関する研究会(座長=江頭憲次郎早稲田大学大学院教授)が開催されました。
→中小企業庁HP 第7回配布資料
【時代を画する重要な方向性】
平成22年2月15日から7回にわたる研究会の検討の成果が、「中間報告書」として取りまとめられました。
→参考: 中間報告書案 *文言の修正等を経て、公表の予定
中間報告書は、中小企業の会計に関して重要な方向性が示されるものとなりました。その影響が顕在化するまで、あまり時間はかからないと考えられます。
関係者の便宜のため、以下に中間報告書の概要を示します。
【中間報告書の概要】
Ⅰ 検討の背景
会計制度の国際化の流れの中で、中小企業の実態に即した会計のあり方を研究会では検討してきたが、その成果を中間的に取りまとめたものが、本中間報告書である。
Ⅱ 現状認識
1. 中小企業の実態
中小企業の会計のあり方を検討するにあたり考慮すべき属性は以下のとおり。
(1)資金調達
金融機関からの借り入れが中心。代表者の個人資産の拠出や内部留保の利用も。
(2)利害関係者
利害関係者は限られ、会計書類等の開示先は限定的。
(3)会計処理の方法
主として取得原価主義に基づく会計処理が行われ、法人税法で定める処理を意識した会計処理が行われている。
(4)経理体制
多くの中小企業は経理担当者が少なく、経営者などの会計知識も十分でない。
2.中小企業の会計を形作る枠組み
(1)企業会計に関する法的枠組み
①会社法会計
株式会社の会計は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従う」とされているものの、その慣行は複数存在する幅の広い概念であり、最終的には裁判所に委ねられる。
②法人税法会計
会社法の会計処理が課税所得計算の根本に据えられている。そのため、企業所得の計算は、まず企業会計があり、その上に商法ママの会計規定があり、その上に租税会計がある(会計の三重構造)と指摘される。だが近年では、法人税法の処理と会計処理との乖離が広がっていることが指摘されている。
③金融商品取引法会計
財務諸表は一般に公正妥当であると認められるところに従って作成しなければならないとされ、定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うとされている。
(2)中小企業の会計を巡るこれまでの経緯
①「企業会計原則」、「中小企業簿記要領」、「中小会社経営簿記要領」について
②「中小企業の会計に関する指針」の策定に至る経緯
③「中小企業の会計に関する指針」の特徴
(3)国際会計基準と中小企業会計
企業会計基準のIFRSへのコンバージェンスが加速し、それに伴い中小指針も累次の改訂がなされ、間接的にIFRSへのコンバージェンスが行われることとなっている。
Ⅲ 主要論点
1.中小企業の会計に関する基本的な考え方
中小企業の会計処理のあり方は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行であって、次のようなものが望ましい。
① 経営者に役立つ会計
経営者が理解でき、経営状況を適切に把握できる
② 利害関係者と繋がる会計
金融機関や取引先等の信用を獲得するために必要十分な情報を提供する
③ 実務に配慮した会計
実務の会計慣行を最大限考慮し、税務との親和性を保つことができる
④ 実行可能な会計
中小企業に過重な負担を課さない身の丈に合ったもの
2.検討対象の範囲
3.中小指針について
① 中小指針に係る総論
② 中小指針の利用実態
③ 中小指針における個別勘定項目
4.その他
(1)金融機関の観点から見た中小企業の会計
(2)国際会計基準の影響の遮断又は回避
(3)確定決算主義の維持
(4)記帳の重要性
(5)分配可能額の差異
(6)管理会計
Ⅳ今後の対応の方向性
1.新たに中小企業の会計処理のあり方を示すものを取りまとめるにあたっての基本方針
① 中小企業の会計実務の中で慣習として行っている会計処理のうち、会社法の一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行と言えるものを整理する
② 企業の実態に応じた会計処理を選択できる幅のあるものとする
③ 中小企業の経営者が理解できるものとする
④ 記帳も重要な構成要素として取り入れる
2.取りまとめの手続
Ⅴ結び